雪の降りしきる2021年2月5日、酒のかどやの地元・新潟県村上市で銘酒「〆張鶴」を醸す宮尾酒造に取材に伺いました。
酒のかどやからは車で5分ほどの宮尾酒造。酒蔵からは毎日多くのお酒が入荷します。
そんなお酒がどんな想いを込めて造られているのか。
今日は宮尾酒造社長の宮尾佳明さんから直接お話を伺いながら、営業課長の高橋武哉さんの案内で工場の内部や精米工場まで案内していただけることになっています。
宮尾酒造は一般には酒蔵見学は一切受け付けていませんので、全国の〆張鶴ファンの皆様には、少しでも酒蔵見学気分を味わっていただけると幸いです。
後味のきれいな、料理に合わせて飲み続けられる酒質
全国の日本酒ランキングでも常に上位に名前が上がる新潟県の銘酒「〆張鶴」ですが、首尾一貫として目指すのは「後味のきれいな、料理に合わせて飲み続けられる酒質」。
5年前の2016年に「〆張鶴 純米吟醸 生原酒」試飲会の取材にうかがった際も、杜氏から同じようにお話していただいたのを思い出します。
ところで、「〆張鶴」の代表銘柄といえば何を思い出しますか?
私は日本酒ランキングの純米吟醸部門で一位を取り続けている「〆張鶴 純米吟醸 純」でしょうか。
1971年、まだ酒税法によりお酒を「特級」「一級」「二級」などと分けていた頃、醸造用アルコールの添加が無い『純米酒』というジャンルは珍しかった時代に、宮尾酒造ではいち早くこのお酒を発売しました。
だからと言って、『純米酒』だけに拘るのではなく、目指す酒質はあくまで飲み飽きしない酒。
昨年より新しく発売となった「〆張鶴 純米大吟醸」の三種(RED LABEL/BLUE LABEL/PRATINUM LABEL)も、全く同じ考えのもとに醸されたということです。
「長年培った純米酒造り、大吟醸造りの経験と技術を活かし、厳選した山田錦を原料に使い仕込みました。
弊社の最高級品です。
いつもはワインなどを楽しんでいる層にも、日本酒を、「〆張鶴」を知ってもらいたい。」
そんな思いを宮尾社長は語ってくれました。
そして、今季12月から新発売となった、「〆張鶴」の名前を冠しない地元限定の新シリーズ「お城山」。
次回3月25日頃、第二弾の「お城山 純米吟醸 生原酒」が発売となります。
こちらのシリーズに関しても、「後味のきれいな、料理に合わせて飲み続けられる酒質」をしっかりと踏襲しながらも、「〆張鶴」の季節酒とは違った味わいを表現していくとのことです。
「変えるというより、レベルアップしていく」
近年、「発泡」「にごり」「低アルコール」といった新しい手法に挑戦する酒蔵が増えてきました。
実際、蔵元としてもそういった期待を受けているのでは?・・・と、少し意地悪な質問をぶつけてみました。
新しく商品を作ったとしても、すぐになくなってしまうようなものは造りたくない。
周りの声を過剰に意識することなく、あくまで目指す酒質を時代に合わせて造りたい。
「変えるというよりは、レベルアップしていく、ということなんですよ」と宮尾社長。
宮尾酒造には主に造りを行う本社工場とは別に、門前川を挟んで貯蔵・瓶詰めを行う第二工場、少し離れた場所に精米工場があるのですが、最近では本社の麹室を二つに増設したそうです。
それは、人間の作業工程に合わせたのではなく、生き物である麹の都合に合わせてベストな状態を整えたということ。
設備にしても技術にしても、時代が進み進歩すれば今まで出来なかった事が出来るようになります。
その時々にあったものを最大限に生かして、目指す酒質を表現していく。
ブレることのない「〆張鶴」の底力を垣間見たような気がしました。
宮尾社長は、決して饒舌ではなく、こちらの質問の意図をすぐに察知してくださるにもかかわらず、すぐに核心に迫るような答えはくれません。
しかし、「〆張鶴」ブランドにはまっすぐな軸があるからこそ、全てがそこに回帰していき、言葉にしなくても伝わってくるものがあったように思います。
そして、インタビューの最後に試飲させていただいたお酒で、それを確信することになりました。
飲めば分かる!「〆張鶴 純米吟醸 生原酒」
コロナ禍により今年も中止となってしまった「にいがた酒の陣」ですが、例年、宮尾酒造のブースではこの時期イチオシのお酒が「〆張鶴 純米吟醸 生原酒」です。
今日の取材ために暖めておいて下さった応接間にも、このお酒が1本準備されていました。
テーブルには、「〆張鶴 純米吟醸 生原酒」の原料米である山田錦を50%精米したサンプルも。
今年のお酒の出来具合を確かめて欲しい、ということで、早速一口いただくと・・・程よく華やかな吟醸香と、ふくらみのある優しい甘みが口いっぱいに広がって、すぐにサッと消えていく。
宮尾酒造が目指している方向性がそのまま口の中から伝わって来るようです!もう一口、また一口とつい進んでしまいます。
この日は初めてこのお酒を常温でいただいたのですが、冷たいまま頂くよりもしっかりとした味わいでした。
お好みに合わせて、温度・器を変えて何度でも楽しめそうですね。
来年は「にいがた酒の陣」の会場で、みんなで乾杯したいです!
いざ、工場見学へ!
さて、お話を伺った後は、営業課長の高橋さんに本社の奥と近隣の第二工場、精米工場を案内していただきました。
有名な「〆張鶴」の暖簾をくぐり、町屋造りの土間を抜けると広々としたスペースに出ます。
町屋らしい梁が圧巻です。
工場入り口の上には『醸道無限』の書が掲げられています。
本社工場の中は、コロナ禍ということで今回は遠慮することになりましたが、3階に麹室があるそうです。
ここで造られたお酒は、門前川対岸の第二工場へタンクローリーで運ばれます。
第二工場は広々としていて大きな貯蔵棟が3棟あり、1棟は一般酒、2棟は県内最大級の冷蔵倉庫で大吟醸、純米大吟醸全て瓶貯蔵されているそうです。
目の前は瓶詰め工場となっており、繁忙期には天井に届くほどにケースが積まれているとか。
第二工場から精米工場までは車で2、3分ほど。
建物は奥まって目立たないのですが、道路沿いに「〆張鶴 精米工場」の看板がありました。
ちなみにここからも、かつて村上城のあったお城山(臥牛山)が見えます。
精米工場では、今日も何かのお米を精米しているところでした。
実は、酒米の精米については、大きな蔵でも自家精米していないところも多いのだそうです。
そういった酒蔵では複数の酒蔵での共同精米や、農協などに委託しての精米となります。
宮尾酒造では仕込みに使用する酒造好適米は全て自社工場で精米しています。
精米から出荷まで一切の妥協を許さない、宮尾酒造らしい酒造りです。
「〆張鶴」の大吟醸「〆張鶴 大吟醸 金ラベル」は山田錦35%精米ですが、35%までお米を精米するのに65時間かかります。
お米が割れないよう、熱を持たないよう、その時の米の出来具合にも合わせて細心の注意を払い削っていくのです。
精米を待つお米たちがずらり。どんなお酒になるのでしょうか。
宮尾社長、高橋さん、本日はお忙しいところお時間を頂きありがとうございました!
この記事で紹介したお酒はこちら >>
・「〆張鶴 純米吟醸 純」
・「〆張鶴 純米吟醸 生原酒」
・「〆張鶴 純米大吟醸 RED LABEL」
・「〆張鶴 純米大吟醸 BLUE LABEL」
・「〆張鶴 純米大吟醸 PLATINUM LABEL」
・「お城山 純米吟醸 生原酒」
※「〆張鶴 大吟醸 金ラベル」は完売です。